ワシントン州における各種労働法関連事項について、2025 年 1 月 1 日から以下のとおり改定されます。雇用主には、該当事項につき、新基準に基づく確認および改定作業を行うことが勧められます。
1. 最低労働賃金
ワシントン州の最低労働賃金は、2024 年の時給 16.28 ドルから 38 セント上昇し(前年比 2.35% 増)、時給 16.66 ドル となります。
なお、特にシアトル、シータック(Sea-tac)、タクウィラ(Tukwila)では、州の最低労働賃金よりも高額となる以下の金額が適用されます。
- シアトル:時給 20.76 ドル。例年と異なり、会社の規模にかかわらず一律に適用。雇用主負担の医療補助が付与される場合や、従業員がチップを得る場合でも、それらを含めた金額を最低労働賃金の一部として計算することは不可。
- シータック:時給 20.17 ドル。運輸・観光業に従事する労働者に適用。
- タクウィラ:
- 大企業(従業員数 500 名超):時給 21.10 ドル
- 中小企業(従業員数 15〜500 名):時給 20.10 ドル。2025 年 7 月 1 日以降は時給 21.10 ドル。
- 小規模企業(従業員数 15 名未満で、年間総収入が 2 百万ドル以下であり、かつフランチャイズと提携している場合は従業員総数が 500 名超とならない場合):州の最低労働賃金が適用。
2. 残業手当の適用・非適用に関する基準額
最低労働賃金の上昇に伴い、残業手当適用・非適用にかかる基準値も引き上げられます。残業手当非適用の従業員(overtime exempt employees)には、以下の基準が適用されます。
- 従業員数 50 名以下:最低週給 1,332.80 ドル(年俸69,305.60ドル)(最低労働賃金の 2 倍)
- 従業員数 51 名以上:最低週給 1,499.40 ドル(年俸77,968.80ドル)(最低労働賃金の 2.25 倍)
コンピュータ専門職については、時給で賃金が支払われる場合でも残業手当非適用従業員に該当する場合があり、2025 年の基準額は、最低労働賃金の 3.5 倍である時給 58.31 ドルです。
【ご参考記事】2020 年残業手当に関する基準改正:ワシントン州法および連邦法
3. 競業避止に関する法律に基づく報酬基準額
ワシントン州で就労する労働者に対して競業避止義務を課す場合は、法律により一定の条件を満たす必要があります。毎年労働産業局は、条件の一つである年間報酬基準額を、物価の上昇に合わせて調整します。2025 年 1 月 1 日以降、従業員の場合は 2024 年基準額の年俸 120,559.99 ドル超から 123,394.17 ドル超へ、独立請負業者の場合は年間報酬額 301,399.98 ドルドル超から 308,485.43 ドル超へ、それぞれ引き上げられます。
【ご参考記事】ワシントン州競業避止に関する法律、2020 年より施行開始
4. 家族・医療休暇給付に関する法律に基づく保険料
ワシントン州の家族・医療給付プログラムにおける保険料率が、2024 年の 0.74% から 0.92% に上昇します。また、雇用主および従業員の保険料負担率が、2024 年の 28.57% および 71.43% から、それぞれ 28.48% および 71.52% に変更します。
従業員数が 50 名未満の雇用主の場合、雇用主の保険料負担分は免除されますが、チップを除いた総賃金支払額を、ワシントン州雇用安定局(Employment Security Department。以下「ESD」)へ報告する必要があります。雇用主は、従業員負担分を全額賃金から控除するか、またはその一部もしくは全部の代替負担を選択することが可能です。賃金からの保険料控除限度額は、社会保障料控除限度額と同様で、2025 年は 176,100 ドルです。支払済の保険料が保険控除限度額に達した場合、雇用主は保険料の徴収は停止するものの、賃金は継続して ESD へ報告する必要があります。
対象となる雇用主には、2024 年 10 月下旬に、州から通知文書が発行されていますのでご確認ください。
自社プランにより家族・医療休暇給付を提供する雇用主においては、異なる計算式が該当する場合があります。自社プランに関する情報は、ワシントン州家族・医療休暇給付のウェブサイトをご確認ください。
【ご参考記事】ワシントン州家族・医療休暇給付に関する法律、2019年より施行
5. 職場ポスター
雇用主は、連邦法、州法、条例に基づき、自社に該当する職場ポスターを、従業員が職場で容易に見て読める場所に掲示する必要があります。これらポスターは、関係当局のウェブサイトから入手可能です。例えば、ワシントン州雇用安定局が管轄する家族・医療給付プログラムについて、同プログラムのウェブサイトから 2025 年版のポスターが入手可能です。さらには、シアトル市の労働基準を記載した職場ポスターが 2025 年用に改訂されて同市のウェブサイトに掲載されており、英語版のほか、複数の言語に翻訳され、日本語版も準備されています。雇用主においては、自社に適用される職場ポスターを確認し、必要に応じて改訂版のポスターを入手して掲載することが勧められます。
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