ワシントン州家族・医療休暇給付に関する法律(Paid Family and Medical Leave)が、2019年1月1日から施行されます。同法は、従業員が家族のケアまたは治療等の医療目的で休暇を取得する際に、給付金が支払われる保険プログラムを定めたものです。同プログラムは、次の 2 段階に分けて実施されます。
① 2019 年 1 月 1 日:保険料の徴収、7 月から報告・支払開始 *
雇用主は、2019 年 1 月 1 日から従業員の賃金の 0.4% に該当する保険料を徴収し、2019 年 7 月からワシントン州雇用安定局(Employment Security Department。以下「ESD」)へ支払います。保険料は、従業員負担分を給与から一部控除し残額を雇用主が負担するか、雇用主が全額負担します。従業員の給与から控除する場合、最大 63% まで控除することが可能です。但し、ワシントン州で勤務する従業員数が 50 人未満の場合は雇用主負担分が免除され、また例外として本プログラムが適用されない企業・団体もあります(後述「免除団体等」参照)。
* 2019 年第一四半期分の報告・支払期間は当初 4 月中でしたが、7 月 1 日から同月末日までに延長されました。
② 2020 年 1 月 1 日:申請に基づく従業員への給付開始
従業員は、家族のケアまたは治療等の医療目的で休暇を取得する際、ESD へ申請することにより、給付金を受給できます。なお、受給の条件は、該当期間に 820 時間以上勤務していることであり、勤務時間は複数の雇用主での就労時間を合算することができます(「該当期間」については、以下「休暇取得時期・目的・条件・期間上限」参照)。
【免除団体等】
① 中小企業の場合
ワシントン州で就労する従業員が 50 人未満の場合、雇用主負担分の保険料支払いは免除されます。但し、従業員負担分は給与から控除し、ESD へ支払う必要があります。従業員数は、フルタイム相当従業員(fulltime equivalent employee, FTE)ではなく、2019年初期は第一四半期(1 ~ 3 月)について雇用主が報告した従業員数で計算します。2019 年 9 月からは、雇用主が報告した過去 1 年間の従業員数を平均して算出されます。
なお、従業員数が 150 人未満の雇用主で、雇用主負担分を支払う場合、最高 3,000 ドルの助成金を受給可能です。助成金の申請は、年間最高 10 回行うことができます。
② その他免除企業・団体等
次の個人・企業・団体には、本プログラムは適用されません。
・連邦政府が雇用主の場合
・連邦政府が認可した原住民部族(参加オプションあり)
・個人事業主オーナー(参加オプションあり)
・労働協約が 2017 年 10 月 19 日までに締結されている企業・団体(交渉再開または満了後は適用される)
・一時雇用の従業員
【保険料の徴収・支払】
2019 年 1 月 1 日より、雇用主は保険料として、従業員の給与総額(税引前。チップ除く)の 0.4% を徴収します。保険料は、従業員の給与から差し引くか、雇用主が負担します。従業員の給与から差し引く場合、最高 63% を控除することが可能で、残り 37% は雇用主が負担します。雇用主は、四半期終了後の翌月末までに、従業員の賃金および就労時間等を報告し、保険料を ESD へ支払います。四半期は暦通りに分けられ、例えば 1~3 月期は 4 月末までに、4~6 月期は 7 月末までに報告し、支払います。給与からの保険料控除限度額は、社会保障料控除限度額と同様で、2018 年は 128,400 ドルです。保険料は、2021 年以降、法律に基づき ESD により年次で調整されます。(但し、2019 年第一四半期の報告・支払い義務は、7 月 1 日から同月末日まで延長。)
【休暇取得時期・目的・条件・期間上限】
従業員は、2020 年 1 月 1 日から給付金付きの家族・医療休暇を取得することができます。この休暇が対象とする取得目的は、次の通りです。
① 家族休暇
・出産および出産後の育児または 18 歳未満の子供の世話のため
・家族の重大な健康問題に対応するため
・兵役に対応するため(詳細は、連邦労働省ガイドラインをご覧ください。リンクご参照)
② 医療休暇
・本人の重大な健康問題のため
休暇取得の条件として、(i) 直近の 5 四半期中最初の 4 四半期、または (ii) (i) の条件を満たしていなければ、直近の 4 四半期において、820 時間就労している必要があります。就労時間の算出においては、複数の雇用主における就労時間を合算することができます。
給付金付きの家族休暇または医療休暇は、それぞれ最低連続 8 時間から最高 12 週間まで取得できます。但し、医療休暇において、妊娠に関する重大な健康問題が生じた場合は、2 週間追加で取得できます。更に、家族休暇および医療休暇は、あわせて最高 16 週間まで取得可能です。但し、家族休暇および医療休暇の取得期間合計は、妊娠に関する重大な健康問題のため就労不能な場合は、18 週間まで取得できます。
従業員が 50 人以上存在する場合、12 ヵ月以上勤務し、かつ直近で 1,250 時間以上勤務した場合は、職場復帰が保証されます。当該 50 人は、雇用主が、同年または前年、20 週以上の期間、各週において最低 50 人を雇用した場合が該当します。
【給付金について】
家族・医療休暇給付は、100 ドルから 1,000 ドルの範囲で、週単位で支給されます。金額は、該当期間において最も高かった 2 四半期の賃金合計を 26 で除し、端数を切り捨てて直近のドルに計算します。その週平均賃金を、更に次のいずれかに当てはめて計算します。
① 金額が州の週平均賃金*の半分以下の場合
週単位の給付金は、従業員の週平均賃金の 90% で、端数を切り捨てた直近のドルとなります。
② 金額が州の週平均賃金の半分を超過する場合
a) 従業員の週平均賃金の 90% を算出します。但し、州の週平均賃金の半分が上限です。
b) 州の週平均賃金の半分を超える従業員の週平均賃金を計算し、更にその 50% を算出します。
c) (a) および (b) を足して、端数を切り捨てた直近のドル額が給付される金額です。但し、1,000 ドルが週限度額です。
例外として、従業員の週平均賃金が 100 ドルに満たない場合は、週最低給付金 100 ドルの規定にかかわらず、当該従業員の給与額が付与されます。
* ESD が発表した 2017 年ワシントン州週平均賃金は、1,190 ドルです(リンクご参照)。
【記録の保存期間】
雇用主は、家族・医療休暇給付にかかる雇用の記録を、6 年間保存する必要があります。
【雇用主への通知】
休暇取得事由が予測可能な場合、従業員は雇用主に対し、当該事由発生の 30 日前までに、給付金付きの家族・医療休暇を取得予定であることを通知する必要があります。取得事由が予測不可能な場合、実行可能な範囲で速やかに雇用主に通知します。
【自社プランによる家族・医療休暇給付の提供】
雇用主は、自社プラン(Voluntary Plan)で従業員に対し、家族・医療休暇給付を提供することも可能です。自社プランは、州法で定める利益・手当を最低限付与する必要があり、かつ ESD に申請して承認を取得する必要があります(申請費用 250 ドル。詳細・承認申請画面リンク)。自社プランは、最初 3 年間は毎年承認を取得する必要があり、以後は変更があった場合のみ再申請・承認取得が必要です。なお、自社プランでは、家族・医療休暇の一方または双方を提供することができます。一方のみ提供する場合、もう一方の休暇は、州のプログラムに基づき提供されます。自社プラン承認後は、翌四半期から効力を生じます。
自社プランで給付金を受給する従業員は、820 時間の就労に加え、現雇用主において 340 時間勤務していることが条件となります。もし現雇用主のプランでは条件を満たしておらず、しかし適用期間中 820 時間以上就労している場合は、州のプログラムにより給付金を得ることができます。
雇用主は、従業員が休暇予定期間の最低半分を取得し、かつ当該予定期間分の給付金を全額付与する場合に、給付金付与の時期を早めて、従業員の早期復帰を促すことができます。給付金を予定より早く受給して早期復帰するか否かの選択は、従業員にあります。この早期復帰 は、自社プランでのみ実施可能です。
【奨励されるアクション】
対象個人・企業・団体は、2019 年 1 月 1 日の施行前に、次のアクションを取られることが勧められます。
・2019 年 1 月 1 日から開始する保険料徴収のため、従業員負担分および雇用主負担分の保険料を計算する。
・ESD 発行の「Employer Toolkit」(リンクご参照)を、給与明細担当または委託会社へ送付する。
・ESD が準備した家族・医療休暇給付に関する 1 枚の説明書きを、2018 年中に従業員に配布する。説明書きは、日本語および他言語でも準備されている(リンクご参照)。
・家族・医療休暇給付に関する通知を掲示する。当該通知は、ESD が年末までに準備し、公示する。
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